天才パイロットは契約妻を溺愛包囲して甘く満たす
「……父が怖いからですか?」
そう聞いてみると、露木さんはクスクス笑う。
「違うよ。そうじゃなくて……前も言ったけど、俺は本当に嫌な奴かもしれない」
露木さんはそう言いながらも、私を抱きしめる手に力をこめる。
狭くて窮屈で、なのにどこより居心地がいい。
「嫌な奴ではないですよ。少なくとも、私にとっては」
「紗弓……」
「でも、いつか教えてくださいね。露木さんがそう思ってしまう理由。私、待ってますから」
そっと体を離し、彼を見上げて微笑む。露木さんは優しく目を細めて頷いてくれた。
「わかった。……やっぱり、きみは思っていた通りの女性だ」
「思っていた通り?」
「そう。初めて会った時から特別なものを感じてた」
「……中華アフタヌーンティーの時ですか?」
そんな風には見えなかったけどな。あの時はお互い結婚に消極的だったし。
「どうかな。さて、香椎さんに怒られるからそろそろ帰ろうか」