天才パイロットは契約妻を溺愛包囲して甘く満たす
「あ、嵐さん……っ」
思い切って口にしたはいいが、普通にしようと思えば思うほど声が上擦った。カッコ悪いことこの上ない。
「よくできました」
ポンポンと頭に手を置かれ、またときめいてしまった。
悔しいけれど、彼の前では簡単にチョロい女になっている気がする……。
軽くむくれつつ、嵐さんを見上げる。
「じゃ、約束通りヒントをください」
「了解。今から六年前……季節は夏。出会った場所は、きみの働くラウンジの近くだ」
私が就職した年だ。夏ということなら、ようやく仕事に慣れてきた頃だろうか。
「近く……ラウンジの中ではないってことですか?」
「ああ。俺はラウンジを利用し終えて、これから飛行機に乗ろうというところだった」
嵐さんはその時に、私と出会っている……?
懸命に記憶を辿るものの、まったく思い出せない。