天才パイロットは契約妻を溺愛包囲して甘く満たす

「なにか言葉を交わしました?」
「それを教えてしまったらおもしろくない」
「意地悪……」
「言っただろ、嫌な奴かもって」

 口ではそう言いながらも、空いている方の手で甘やかすように私の頬を撫でる嵐さん。

 冷たかったはずの頬が途端に熱くなって、あっけなく絆される。

「結婚するの、やめようかな」
「本気?」

 悔し紛れの呟きに真剣なトーンで返される。

 怒っているようにも見える視線にギュッと胸が苦しくなって、私はすぐに首を左右に振った。

「ごめんなさい……嘘です」
「ならよかった。ま、今さらやめると言われても離さないけどな」

 絡んだ指に力がこもる。

 それって、独占欲って思っていいんですか……?

 声には出せない問いかけが、私の胸を苦しくさせる。

 それでも、今さらこの気持ちを放り出せないのは私も同じ。

 彼をもっと知りたいし、理解したい。そんな一心で、嵐さんの手を握っていた。

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