天才パイロットは契約妻を溺愛包囲して甘く満たす
年末年始はお互いに多忙だったので、実は久々のキスだった。
食むように何度も唇を合わせてくる彼に、甘いため息がこぼれる。
「ん……っ、嵐さん、せっかく塗ったリップが……」
「ごめん。あまりにも美味しそうだったから」
ちゅう、と派手なリップ音を立てて唇を離す彼に、反省の色はない。
その上まだ少し眠たそうな目元や軽く乱れた髪がセクシーで、このまま仕事にいかずに嵐さんといられたらいいのに、なんて社会人として危うい思考が湧く。
もちろん、実際にはちゃんと出勤するけれど。
「……電車に乗り遅れちゃうので、行きますね」
「絶対に、女性専用車両な。それと、防犯ブザーはちゃんと持ってる?」
「はい」
バッグの持ち手にぶら下げてある、ライト付きのブザーを見せる。少々カッコ悪いけれど、身の安全のためだ。
幸い、あれ以来昇さんからの接触はとくにない。
「それならよし。行ってらっしゃい」
「行ってきます」
こんなふうに彼が過保護なのもいつものことだ。今日は彼もこれから国際線フライトで数日不在になるが、休みの日なら車で空港まで送迎してくれるし、家を空ける時はこまめに連絡をくれる。
彼がいない時は、念のため夜の外出も禁止。結婚したら私を守るという約束を律儀に守ってくれているのだろう。