天才パイロットは契約妻を溺愛包囲して甘く満たす

 午前中はとくにトラブルなく過ぎていき、迎えた昼休み。

 久々にシフトが一緒になった夏希と、ターミナル四階にあるハンバーガーショップに出向いてランチをともにした。

 空港内の飲食店は、社員証を見せれば空港職員割引で食事ができるのでありがたく利用している。

 一般客に交じって列に並び、野菜たっぷりのビタミンバーガーセットを注文する。

 できあがった商品をお盆にのせると、混雑した店内を避け、フードコートのようになっている店外の席に着いた。

 ここからは一階下の出発ロビーが見下ろせるので、ひとりの時でもなにげなく人の往来を眺めているだけで退屈にならない。

「それで、イケメンエリートパイロットを射止めた気分は?」
「別に射止めたというほど熱心にアプローチしたわけじゃないけど……」
「その謙遜、自慢にしか聞こえない」
「ご、ごめん……」

 夏希には結婚報告だけしていたがゆっくり話す機会がなかったので、契約結婚であるなどこみ入った事情は伏せて、とりあえず平和な毎日を過ごしていることを伝える。

 なんとなく想像していたことだが、夏希は盛大に拗ねた。

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