天才パイロットは契約妻を溺愛包囲して甘く満たす

 海外の航空会社が運航する便だったが日本人の被害者もいて、ニュースは連日その被害の深刻さを報じていた。

 事故原因は、与圧トラブル。そう言われても当時の私には意味が分からなかったけれど、父が説明してくれた。

 旅客機が飛行する高度は標高の高い山と同じで気圧が低く、酸素濃度が薄い。それでも飛行機の中で快適に過ごせるのは、与圧装置という機械で機内の気圧を調整しているからだ。

 しかし、その与圧装置に不具合が発生して急に気圧が下がる事態が起き、酸素マスクをつけるのが遅れたパイロットたちがふたりとも失神。機体を制御できる人員は誰もいなくなり、墜落に至ったそうだ。

 しかし、父によるとパイロットは急減圧に備え日頃から訓練を重ねているので、本来ならあり得ないミスだそう。

 だから必要以上に怖がらなくていいとは言っていたものの、父は私がCAを目指すことに難色を示すようになった。

 航空業界への就職をあきらめる必要はないが、せめて地上職にしてくれと。

 CAになりたい気持ちは本物だったから最初は反発していたものの、事故からちょうど一年が経った頃、事故の被害者を偲ぶ慰霊祭の様子がテレビで放映されていた。

 
< 7 / 229 >

この作品をシェア

pagetop