天才パイロットは契約妻を溺愛包囲して甘く満たす
【忠告しておくけど、露木は紗弓の他にも女がいるからな】
目にした瞬間、ドクン、と心臓が揺れた。
信用できない相手からの言葉なのに、勝手に心がざわついてしまう。
根拠は? 根も葉もない嘘でしょう? 本当にそんな人がいるなら、名前は?
つい返信したい衝動に駆られるが、そんなことをしたらきっと昇さんの思うツボだ。
彼はきっと、私が焦ったりショックを受けたりするのを楽しんでいるだけ。そしてあわよくば反応があったら、復縁を迫るつもりだろう。
結婚前、嵐さんは付き合っている女性なんていないと言っていた。その目に嘘はなかった。
実際に一緒に暮らし始めてからも、女の人の気配を感じたことは一度もない。
深呼吸をして、なんとか動揺を収める。けれど、昇さんが植え付けた微かな疑念のせいで、打ちかけていた嵐さんへのメッセージを送ることができなくなってしまった。
嵐さんを信じているとはいえ、彼のすべてを理解できていないのは事実だから……。
「紗弓、午後の仕事大丈夫? 無理しなくていいからね」
スマホを見つめたまま沈黙していると、心配そうな夏希に顔を覗き込まれる。
慌ててショートメールの画面を閉じ、笑顔を作った。