天才パイロットは契約妻を溺愛包囲して甘く満たす
「ううん、大丈夫。今日は家に帰っても誰もいないし、仕事してる方が気分転換になる」
「旦那さんいないなら、今日は実家に帰った方がいいんじゃない? どこでアイツが見てるかわかんないもん」
「……だね。そうする」
新居の場所はバレていないと思うけれど、後をつけられたらアウトだ。
実家なら必ず母がいてくれるし、ひとりでいるよりは安心できるだろう。
今夜はそちらに帰ると母にメッセージを入れ、ようやく中断していた食事を再開した。
仕事を終えて帰る時は、空港から品川駅まで夏希が一緒についてきてくれた。
ちょうど寄りたい場所があっただけだと言っていたけれど、たぶん、私のことが心配で一緒にいてくれたのだと思う。
駅構内で別れる時も、『人目の多い道を選んで帰るんだよ』としつこいくらいに言って、地下鉄乗り場の方へと歩いていく私をしばらく見送ってくれていた。
自宅の最寄り駅からは明るい通りを選んで早足で歩き、手にはブザーを握りしめる。
そんな風に警戒心を張り巡らせていたから、何事もなくマンションにたどり着けた時には、肩の力が抜けた。