天才パイロットは契約妻を溺愛包囲して甘く満たす

「行方不明者が多い中、うちの両親の亡骸は一カ月後になんとか発見された。それだけでも幸運だったけど、同時に見つかった遺品の中からは俺に宛てたメッセージもあったんだ」
「メッセージ?」
「ああ。……これだ」

 彼がシャツの胸ポケットからスッと取り出したのは、折りたたまれた小さなメモ。

 しわくちゃでところどころ染みがある。海水に濡れた跡だろうか。

 彼がメモを開いて、私の前に差し出してくれる。

【嵐へ Be strong. Look abroad.】

 ふたり分の筆跡が並んでいるので、それぞれお父様とお母様からのメッセージだろう。

「少しペン先が震えているように見えるのは、すでに墜落するとわかっている状況で書いたものだからなのかもしれない。……あまり、深く考えないようにはしているが」

 パニック状態になってもおかしくない事故のさなかに、ご両親はこれを……。

 ぐっと、喉の奥に熱いものがこみ上げた。

 自分たちの最期を覚悟して、それでも嵐さんにはパイロットの夢をあきらめないでほしいとなんとか本人に伝えようとした、ご両親の深い愛情と覚悟が伝わってくる。

 それに、嵐さんが前にこう言っていた理由も――。

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