天才パイロットは契約妻を溺愛包囲して甘く満たす
「大切な人を悲しませたくないなら、家族なんてものは作らない方がいい。これからもパイロットを続けるならなおさら。あの時間違いなく紗弓に惹かれていたのに、そう思うことで自分の気持ちを押さえつけていた」
家族は作らない。その言葉に隠された意味が、今ならわかる。
ご両親を一度に失った彼だからこそ、自分と同じ喪失感は誰にも味わわせたくなかったのだ。
「だけど……俺はまたきみと出会って、性懲りもなく惹かれてる。青桐に嫉妬して、咄嗟に結婚を申し込んでしまうくらいにね。家族を作ることにためらいがなくなったとはまだ言えなくても、きみのそばにいたい。本能がそう言ってるんだ」
嵐さんは苦しそうに、それでいて愛おしそうに、私を見つめる。
つらい経験をした彼だもの。私を愛していいのかって、不安になるのはあたり前だ。
そうやって正直に話してくれただけでも、私たちきっと本物の夫婦に近づいている。
「それだけで十分です。嵐さんが心に負っている傷は、簡単に癒えるものじゃない。胸を張って、本当の家族になろうって思えるまでは、私、契約妻で構いません。今度はちゃんと、待ちますから」