天才パイロットは契約妻を溺愛包囲して甘く満たす
「じゃ、ご飯を食べながらふたりで考えましょう」
「それが一番だな。腹が減ってると、頭も働かない」
徒歩で繁華街に移動すると、街は来月に控えたバレンタインムード一色だった。
通り過ぎるショーウィンドウに飾られたハートやチョコレートモチーフの雑貨を見ているだけで、胸がわくわくする。
「嵐さんは甘党だって言ってましたよね。バレンタインのリクエストはありますか?」
「紗弓がくれるものなら、なんでも」
さっきの私のセリフを真似たのだろう。嵐さんはそう言ってから、「な? 結構困るだろ?」と苦笑した。
私も頷いて、クスクス笑う。
「見事に仕返しされちゃいましたね」
「でも、本心だというのは紗弓と一緒だ」
「もちろん、わかってます」
ふたりだけに伝わる会話で笑い合う私たちは、幸せな夫婦に見えるだろう。
今はまだ〝ごっこ〟の域を出なくても、こうして穏やかな日々を重ねて、嵐さんの本当の家族になっていきたい。