天才パイロットは契約妻を溺愛包囲して甘く満たす

 私たちはそれから偶然見つけたカフェで食事をした。おすすめはビーフシチューとのことだったので、ふたりで同じものを注文する。

 四人掛けの席で向かい合い、窓から入り込む冬のささやかな日差しを浴びているだけで、満ち足りた気持ちになる。

 料理が運ばれてくるまでお冷で喉を潤しつつ、午後の予定を相談した。

「この後、映画を見るのはどうですか? 気になっているミステリー作品があって」

 学生の頃から、映画鑑賞や読書が好きだ。

 社会人になってからは、接客業をしていることもあり色々な話題を常に頭に入れておきたいので、人気作は意識的に見るようにしている。

「俺も見たかったやつかもしれない。密室のやつだろ。原作読んだ」
「それです! あの、ネタバレはやめてくださいね、私は未読なので」
「了解。紗弓が驚く顔が見たいしな」

 話しているうちに料理がテーブルに届く。

 褐色のビーフシチューには生クリームが回しかけてあり、仕上げに振ってあるパセリの緑が鮮やかだ。

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