天才パイロットは契約妻を溺愛包囲して甘く満たす
顔を上げて彼女の方を振り向くと、そこに立っていたのはエキゾチックな顔立ちの美女だった。
両親のどちらかが外国人なのかもしれない。背が高く、細身のジーンズがよく似合うモデルのような体型だ。
彼女は胸まである緩いパーマヘアをかき上げると、私を一瞥して嵐さんに問う。
「嵐、この方は?」
「ああ、紹介するよ。妻の紗弓。先月結婚したんだ」
「妻……?」
綺麗な弓型をしたノアさんの眉が、ぴくりと震える。
私はその反応に不穏なものを感じ取るが、嵐さんは気づいているのかいないのか、今度はノアさんを私に紹介する。
「紗弓、彼女はカナダのフライトスクールで訓練をともにした成沢ノア。俺と同じパイロットだ。海外のLCCにいたが、今年になってからうちの会社に入った」
「は、はじめまして」
すごい、女性パイロットなんだ……。
海外では活躍している人も多いと聞くけれど、日本ではそれほど浸透していないのが現実。ブルーバードエアラインでも、初めての採用ではないだろうか。
ノアさんがいかに努力してきたかを一瞬のうちに色々想像して尊敬の念を抱き、私は深く頭を下げる。
しかし、顔を上げた瞬間ぶつかったのは、ノアさんからの敵意たっぷりの眼差しだった。