天才パイロットは契約妻を溺愛包囲して甘く満たす

「どうやって嵐を騙したの?」
「騙した……?」
「しらばっくれないでよ! 嵐が結婚なんかするわけない。嵐を理解できるのは、この私だけ。昔からそう決まってるんだからっ」
「ノア、落ち着けって」

 ノアさんの剣幕に圧倒されていると、席を立った嵐さんが、なだめるように彼女の肩に手を置く。

 彼の手が他の女性に触れているのを見たくなくて、私は思わず目を逸らした。

「嵐も嵐だわ。俺は一生結婚しないって、あの言葉は嘘だったの?」
「ノア……。他のお客さんに迷惑になるから」

 嵐さんは興奮するノアさんを静かに諭し、外に出ようと促す。テーブルから離れる時には私の肩にポンと手を置き、「すぐに戻る」と言い残した。

 ふたりがいなくなると、店内のあちこちから集まっていた注目が興味を失ったようにパッと散るのがわかった。

 取り残された私は、嫌でもふたりの関係に思いを巡らせてしまう。

 同じフライトスクールで切磋琢磨した仲。嵐さんの方はそういう認識のようだけれど、ノアさんはまるで自分が彼の一番の理解者であるかのようだった。

 ソウルメイト――あれってどういう意味なんだろう。

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