かつて女の子だった人たちへ
ユミとレミ
第1話
久原令美(くばられみ)は早起きだ。
白くて形のいい歯を丁寧に磨き、洗顔し、じっくりとスキンケアをほどこす。基礎化粧品は、美容液だけデパコス。あとはドラッグストアやバラエティショップで購入できるものにしている。化粧水は頻回使った方がいいから、安いものでないと買い続けられないのだ。
ブラッシングをした髪をヘアアイロンで巻きなおす。頻繁にヘアサロンに行ってカラーもパーマも維持しているが、朝ひと手間かけないと、髪はつややかにならない。令美の毛は柔らかくコシがあまりないので、夕方にはボリュームがなくなってくる。出かける用事のある日は特に入念に髪をセットすることにしている。
一度洗面所を出て朝食を食べる。クラッカーと野菜スムージーにしているのは、体重管理のためだ。昼食や夕食は、どうしても周囲に誘われて外食が多いので、カロリーコントロールは朝にしている。あとは、単純に食事にかける金と時間が惜しいからである。
クローゼットに準備してある通勤服は、どれも通販でそろえている。優しく甘い雰囲気のブラウスやシャツに、ジャケット。スカートは膝丈。内勤の女子社員には制服があるが、令美は営業部門にいるため、オフィスカジュアルが常だ。客先のアポがある日とない日で、微妙に雰囲気は変えている。
着替えて、洗面所に戻り丹念にメイクを施す。ブルーベースの肌色なので、どうしてもクールで落ち着いた印象の色が似合うのだが、下地からしっかり明るく作っていき、パステルカラーの似合う肌色に変える。化粧下地とファンデーションはデパコス。アイブロウやアイライナーは安価なもの。睫毛はエクステをしているので、アイメイクは昔より楽だ。頬を明るくし、ピンクを主にした愛らしいメイクに仕上げていく。二十六歳にしては少し幼い雰囲気のメイクは、ウケもいいし令美自身も気に入っている。
ぷるんとして見える新作のリップグロスを塗っておしまい。
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