かつて女の子だった人たちへ
「キラも『メルティ』の出身で、レイキの指導係をやってたこともあるの。ほら、レイキってちょっと天然なところがあるじゃない? キラはそれが心配みたいで、私に『レイキのことも応援してあげて』って」
「そうだったんだ……」
「でも、キラに頼まれた後輩の現場にあちこち行ってたら、結構叩かれちゃってさ。『あの子はDDだから』って。あ、誰でも大好きってことね。見境ないみたいなこと言われちゃって」
「ひどいね。トモカちゃんはキラの頼みで出かけてたのに」
「だからかな。メリーを見かけて放っておけなくなっちゃった。界隈で嫌な思いをした者同士なら、信頼し合える関係になれるんじゃないかって思ったんだ」

トモカはトモカでつらい経験をしている。だから親切にしてくれるのだ。

「ありがとう。トモカちゃんと出会えてよかった」
「私もだよ。ちょくちょく『ミルkey』の現場に来るから仲良くしてね」

トモカに友情と感謝を感じながら、一方で芽里は不自由さを感じていた。

(ルールに縛られなきゃ、推しも推せないの? どうして周りにあれこれ言われなきゃいけないの?)

『メルティ』時代はもっとレイキと話せた。誰にも咎められなかった。
それなのに今はチケット代とチェキ代を積んでようやくレイキと数十秒の時間をもらえるだけ。

(いいや、そんなこと考えちゃ駄目。レイキは夢を叶えたんだから)

芽里は自分に言い聞かせる。

(レイキの“オタク”としてレイキを推さないと)


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