かつて女の子だった人たちへ
第4話
「推し活代?」
この日、ライブ後に芽里はトモカとカフェバーにいた。芽里はファジーネーブルのロンググラスをマドラーでくるくるステイしながら尋ねる。
「うん。結構かかるじゃない? だからみんなどうしてるのかなあって思ってさ」
シャンディーガフのグラスを傾け、トモカが答える。
「やっぱ夜職の子は多いかも。キャバとか風俗ね。ここだけの話、ミヤナさんもリフレだし」
リフレ……風俗だ。通常は本番を含まない店のはず。
「そういうところで働けない子はパパ活とか結構聞くね。あとは普通に実家が太くてお金持ってる子もいるかな」
デートをしてお金をもらっている子が本当にいるのだと思うと驚く。風俗もパパ活も、現在の芽里には想像もできない、足を踏み入れる勇気もない世界だ。
「人のことだからとやかく言わないけど、人に言いづらい働き方がしたくないよね」
「トモカちゃんは? 現場多いでしょ」
「私はこう見えて外資系勤務。在宅の日もあるし、月給が結構もらえる」
「そうなんだ。いいなあ」
「でもうちは社保ないし、辞めても退職金もないよ。だから、私こそ若いうちから貯めなきゃダメなんだけどさぁ」
あははと頭を掻き掻き苦笑いするトモカ。
それでも芽里はトモカがうらやましかった。今手元にお金がほしい。レイキを推せるお金が。
「現場、少し減らしてみたら? 全通(開催ライブのすべてに通うこと)することなくない?」
トモカは芽里の窮状を察して、心配そうに言う。