かつて女の子だった人たちへ
「現場に行けば、他の子と張り合いたくなっちゃうでしょ。チェキとかさ。プレゼント渡してる子もいるし」

受付で個人宛にプレゼントを渡すこともできる。メンバーのSNSでプレゼントを身に着けている姿もちょくちょくあがるので、芽里も羨ましいと思っていた。レイキが見たことのないバングルをしていたときは、きっとプレゼントだと泣きそうに悔しかった。

「でも、心配なんだよね。ほらレイキ不器用なところあるから。『ミルkey』でもいじられキャラっていうか」
「あー。ダンスミスったり、変なこと言ってメンバーに突っ込まれてるよね」

トモカが思い出して苦笑いする。

「愛されキャラならいいんだけど、他メンの過激なオタクに邪魔とか思われたら嫌なんだ。だから、ライブではレイキのキンブレもあるんだぞって見せたいし、チェキ列には毎回並んであげたい」
「もう、メリーってばお母さんみたいだよ~」

トモカは笑って、芽里の背をばしばし叩く。

「でもわかるなあ。私もキラを独り占めしたいくらい好きだけど、アイドルとして誰より格好よくいてほしいっていうのが一番だもん。現場で直接応援してあげたいよね」
「うん」

ただ、それには先立つものがいるのだ。
金銭的な問題は大きい。トモカにはこう言ったものの、芽里はもう来週までライブにはいけない。生活を切りつめても、次の支払いの目途がたたないのだ。

(一度だけ、実家に頼ろう。次のカード支払いだけ。)

そう心に決め、芽里はトモカと別れて帰路についた。レイキとは来週まで会えないけれど、仕方ない。分をわきまえないと自分の生活が立ち行かなくなってしまう。

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