かつて女の子だった人たちへ
翌週、芽里はライブの前売り券を購入するか悩んでいた。お昼休憩中にスマホとにらめっこをする。
ライブは明日。先週は我慢できたし、この調子で来週まで我慢すれば、そのときたっぷりレイキとチェキが取れる。いや、そうじゃない。このくらいのペースに落としていかないと芽里の給料では厳しいのだ。

(レイキは私が昼職だって知ってるから、今まで一度もおねだりしたことない。回数行けなくてもわかってくれる)

しかし、最初のネットトラブルで足が遠のきそうになったとき、レイキは連絡をくれたのだ。会いたい、と。
あのときのレイキはきっと限界で、芽里を頼りたかったのだろう。

(ううん、レイキだってアイドルの生活になれてきてるはずだし)

一方で芽里が応援に行かない間に、レイキが上手くやれているかはやはり心配だった。レイキは歌もダンスもあまり上手じゃない。人柄だけであの場所に立っている純朴な男子なのだ。芽里が推して推して推して、彼の輝きの一助にならなければならない。

(それに私が行かない間に、他にオキニ(※お気に入りのファン)ができたら……)

その子にも個レスを返すのだろうか。芽里を特別だと言ったように。

「レイキ……会いたいよ……」

会社の机に突っ伏し、誰にも聞こえない声でつぶやく。
会いたい。レイキに会いたい。
照れ笑いを見たいし、芽里を見つけたときの嬉しそうな顔を見たい。格好良く踊る姿を見たい。

その時、スマホが通知を知らせた。
TWXにDMだ。名前が表示され、それがレイキであると気づく。心臓がどくんと大きく鳴り響いた。
急いでDMを見る。
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