かつて女の子だった人たちへ

【メリーさん、急にごめんね
ちょっと相談したいことがあるんだ
こんなこと駄目なのはわかってるんだけど、どこかで会えないかな】


どくんどくんどくんどくん。
全身が心臓になったかのような拍動だった。レイキが会いたがっている。しかもライブに来てほしいのではなく、外で会いたがっている。コンカフェ時代だって外でデートしたことはないのに。

(待って、いいの? レイキの立場的に)

ここで会ってしまえば、所謂繋がりになってしまう。身体の関係がなくとも、プライベートで会う存在になってしまっては、推しとの適正な距離とは言えないのではなかろうか。

(でも、こんなことを言うなんてよっぽどだ)

頭に浮かんだのはDMで待っていると言われたときのこと。今のレイキも、追い詰められた状況なのかもしれない。

(レイキはどうしても私に会いたいんだ。私にしか頼れないんだ)

彼が困っているなら、会う以外の選択肢はない。
芽里はすぐにDMを返した。あと一分ほどで午後の勤務が始まるが、終業後まで返事をしないのは耐えられない。レイキの気が変わって、誘いを取り下げられたら一生後悔する。

【例えばだけど、今日の夜なら会えるよ。明日以降でも、いつでもいいよ】

打ち終えてスマホをしまおうとしたら、すぐに通知がきた。レイキは芽里の返事を待っていたのかもしれない。
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