かつて女の子だった人たちへ
「私の推しは世界で一番頑張り屋の格好いい人なの。レイキの一番のオタクの意見。信じて」

レイキがようやく顔をあげた。両目が潤んでいた。

「あは、ごめんね。格好悪いね。こんな姿見せて」
「格好悪くない。レイキが相談相手に選んでくれて嬉しい」
「『メルティ』時代から、メリーさんが来てくれると安心するんだ。ライブ中も。だから、どうしようって思ったらメリーさんに会いたくなった。もう少し頑張ってみようかな」

レイキの言葉に芽里はうんうんと頷いた。

「こんな俺だけど、これからも推してくれる?」
「当たり前でしょ? 私、レイキのTO目指しちゃおうかな。応援隊長! どう?」

芽里は自分がこれほど快活に明るく振舞えるとは思わなかった。内向的な性格だし、自分から前に出るタイプではない。デビューライブで炎上してからは余計にびくつきながら現場に通っていた。

しかし、今、芽里はレイキのために立ち上がらなければと思っていた。
びくついている場合でも、引っ込み思案をしている場合でもない。レイキがまっすぐ進んでいけるよう、もっともっと活躍できるよう応援しなければいけない。

「メリーさん、ありがとう。元気でてきた。今日は呼び出しちゃったし、俺のおごりです。たくさん食べて」
「お互い社会人なんだから割り勘にしよ。チェキ撮らないのに、レイキとこんなに話せて、私はそれだけで充分嬉しいの」
「あ~、いつもホントごめんね。もっと接触長くしてって運営には頼んでるんだけどさぁ」

レイキとのひと時は本当に楽しく幸せだった。
こんなふうに頼ってもらえる存在になれるなんて思わなかった。ふわふわと夢見心地だ。
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