かつて女の子だった人たちへ
レイキと駅前で別れ、池袋で私鉄を降りた。地元の駅は同じく池袋から別方向の私鉄なのだが、なんとなく家に足が向かず、ぶらぶらと繁華街を歩いた。
暑い夏の晩だ。街は熱気と様々な匂いで息苦しいほど。
浮かれているのか帰りがたく、ひとりでお酒でも飲み直して帰ろうかと思い始めていた。

レイキの力になれて嬉しかった。いっそう特別な関係になってしまったという罪悪感とも、喜びともつかない感情で胸がいっぱいだ。
だからこそ、金銭問題をどうにかしなければならない。
レイキには応援が必要だ。彼の努力を知り、近くで愛を捧げられる人間が必要だ。

「ライブ毎回。チェキは何枚撮ればいいだろう」

ぶつぶつと呟く。

「物販でも貢献しないと。新規を増やして、『ミルkey』ファンの母数も増やしたい。2.5時代のオタ仲間、声かけてみようかな」

お金。お金がいる。
今の仕事では足りない。
トモカのように給与のいい外資系企業に転職しようか。いや、簡単にそんなことができるなら、だれだってそうしている。

「副業とか」

繁華街の隅で立ち止まって、スマホをタップする。
副業、何かないだろうか。居ても立ってもいられない気持ちでその場で検索する。
在宅データ入力、休日に倉庫作業。副業のマッチングサイトもある。だけどどのくらい収入のプラスになるのだろう。短時間データ入力の平均月収が三万円という表記を見て、絶望する。

(三万円じゃチェキ三周。全然足りないよ)
< 120 / 165 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop