かつて女の子だった人たちへ
翌日、芽里は『ミルkey』のライブに行った。昨日の2万円でチェキを20枚撮ることができたし、レイキにはこそっと「昨日はありがと」とささやかれた。

「もっと会いに来るからね。レイキ、頑張れ」

応援して帰宅する芽里は、もう次のお金を稼ぐ気持ちがある。
ライブの帰り、参戦服のままやってきたのは池袋。昨日の繁華街だ。例のあたりで立っていると、すぐに太った男性が声をかけてきた。二十代から三十代と若そうだが、ラガーシャツには汗染みができ、すえた匂いがする。
交渉には2万円で応じた。もう少し吊り上げられそうだと感じたので、一緒にシャワーを浴びたり、口淫を追加することで2万5千円まで価格をあげた。
二度目にしては上首尾だ。男と別れてから、芽里は確信する。容姿に自信があるわけじゃないけれど、あそこに立っていれば男性は声をかけてくる。そして彼らは芽里に価値を感じてくれるのだ。

「この調子なら、もっと稼げるかも」

それから芽里は週三、四回街角に立った。男は面白いほど寄ってきて、定時に会社をあがれば一晩にふたり相手にできる日もあった。
現金がすぐに手に入る。
芽里はレイキにプレゼントを買った。男性向けのキャップだ。レイキに似合うと思ったのだ。
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