かつて女の子だった人たちへ
今日の相手はかなり年配の男性だ。

「りるるちゃん、舌噛みそうな名前だね。でも若くてかわいいね。肌が綺麗だ」
「ありがとうございます。そんな風に褒めてくださるお客様、あまりいませんよ」
「こんなに可愛いのにかい? 自信持ちなよ」

男性機能は問題ないようで、年配の男性はたっぷり楽しんで帰っていった。次の客は三十分後。部屋を清掃して、シャワーを浴びて……やることが多くて忙しい。

(私みたいなのを可愛いって。処理できれば誰でもいいくせにね)

そんなことを思いつつ、まんざらでもない。芽里は風俗の仕事を望んでやっているわけではない。あくまでお金のためでプライドも何も持ってない。

(でも、客に褒められたら嫌だって気持ちが薄れる。この仕事、続けていけそう)

男性たちにかけられる欲に満ちた言葉に、芽里の承認欲求は確かに満たされていて、それが凝り固まっていた倫理観を壊したのかもしれなかった。何より金さえあれば、レイキを推し続けられるのだ。



今日も芽里は現場に向かう。
お決まりのファッションも多少バリエーションが増えた。受付にレイキあてのプレゼントを渡して会場へ。
ミヤナ一派のところへまっすぐ向かったのは整理券の番号が早かったからだ。彼女が中心となって最前列に誰が占めるかを決めているのは『ミルkey』デビューから四ヶ月以上経っても変わっていない。
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