かつて女の子だった人たちへ
「メリー、ご機嫌だね」
「そうかな?」

今日はトモカが参戦していたので、現場の後にアフターでカフェバーに来ていた。
ごまかしたものの、実際はトモカの指摘の通りだ。
金銭的なゆとりがこれほど心を豊かにするとは思わなかった。週三日嫌な想いをするだけで高額な報酬がもらえ、推し活に使える。
本当はコンカフェ時代からずっとコンプレックスだった。レイキを誰より推したい気持ちがあるのに頻繁には通えない。ポイントも集められない。会社員の芽里には金銭的に限界があった。だけど今は違う。
現場は毎回行けるし、チェキのループだってできる。レイキにプレゼントも贈れる。
お金がなくなったら、また稼げばいいのだ。

「トモカちゃんも嬉しそうだよ」
「えへへ、わかる? 実はこれ見て」

トモカが見せてきたスマホの画面を覗き込むと、界隈では大きなライブの告知が出ていた。

「『モンスターライク』がこれに出るの!」
「え~すごいね! ハコも大きいよね」
「うん。界隈で有名なグループもいくつも出るから、『モンスターライク』の知名度あがる~」

トモカははしゃぎながら、がぶがぶと甘いカクテルを口に運ぶ。ロングサイズのグラスじゃなくて、ジョッキで与えた方がいいレベルの早いペースだ。

「いいなあ。『ミルkey』もいつかこんな舞台に立てるかなあ」

芽里はメン地下の界隈を『ミルkey』以外知らない。
しかし、月に10回以上もライブイベントをしていて、客数は伸びていない。最初こそ勢いがあったように見えたが、少ない日は20人くらいの客数の日だってある。トモカもそのことは知っている。
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