かつて女の子だった人たちへ
「レイキ、ちゃんとお給料もらってる?」

レイキが曖昧な笑顔になった。芽里はどきりとする。そんな顔をされると思わなかったのだ。

「俺も最近知ったんだけど、うちってチェキの販売にノルマがあるんだ」
「ノルマ?」
「うん、達成しない分は自腹っていうか。給料から天引きされるんだよね……。最初の二ヶ月は猶予があって、7月からこの状況なんだけど」
「レイキ、お給料を減らされてるってこと?」
「うーん……、まあそう」

そんなブラックな規定があったなんて、芽里たちファンはまったく知らない。

「メンバーみんな、毎月苦しいんじゃないの?」
「ジュリンとレノは余裕で達成してるし、他のふたりも俺ほど天引きされてないから。チヅは実家住まいだし、ユウヤは親から援助してもらってるみたい」

先にあげたふたりは特に顔がいいふたりだ。ジュリンはミヤナら前グループからのオタクもついてきている。

「レイキ……ご両親には?」
「ただでさえ、俺がアイドル目指してるのをよく思ってないから、こんなこと言えないよね。地元に帰ってこいって言われそうだし、下手したら事務所を訴えるなんて言い出しかねなくて。俺、『ミルkey』が好きだから、それだけは絶対嫌なんだ」
「レイキ……」
「俺が不人気メンなのが結局悪いんだ」

しょげた顔で自嘲的に言うレイキに胸が痛んだ。
芽里は精一杯推し活をしているつもりだった。愛を伝え、頑張れと伝え、チェキを撮りプレゼントを贈った。

(私がこれだけ応援しても駄目なの?)
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