かつて女の子だった人たちへ
芽里ひとりだからだ。もちろん、レイキだってチェキの列に人は並ぶ。何度もチェキを撮るオタクだっている。いつも見かけるオタクは芽里だって認知している。
それでも、他のメンバーよりその人数が少ないのはわかっていた。そして、レイキはいつも一番端で歌って踊っているのだ。反対側の端にいるチヅはレイキより目立つソロパートがある。

(運営がレイキに冷たいんだ。レイキはこんなに頑張ってるのに)

このままではレイキはアイドルを続けられない。レイキの力を、運営が認める間もなくレイキは退場しなければならない。
芽里は財布を取り出した。ファッションヘルスの給料はその日に現金払いなので、手元には現金がある。

「レイキ、そのチェキ代……今月分は私が払うよ」
「え!? そんなの絶対駄目だよ!」

レイキが困惑の声をあげた。眉を寄せ、驚きと申し訳なさをにじませた顔をしている。

「だってレイキがアイドルを続けられなくなっちゃう。それは私が嫌なの。絶対に嫌。もともと、この前だって10限分のお金持ってたし。問題ないよ」
「させられないよ。メリーさんだから余計に」
「私のためを思うなら受け取って」

芽里は財布を握りしめて、じっとレイキを見つめる。
すると、レイキの目からぽろっと涙がこぼれた。

「俺……、俺は駄目なヤツだ。……好きな子にこんなことさせてる」

そう言って涙するレイキに、芽里の心臓は俄然鼓動を早めた。

「好きな子って……やだ、レイキ」
「好きだよ。ずっと特別だって言ってたじゃん。俺はメリーさんのことがずっと好きだったんだよ」

好き。
それは恐ろしい破壊力を持つ言葉だった。
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