かつて女の子だった人たちへ
「え~? そんなことないよ」

確かに以前よりは服装もメイクも研究している。レイキの前で格好悪くありたくないという気持ちと、レイキの彼女なんだから綺麗にしていなければという気持ちだ。
誰も芽里がレイキの彼女だなどと知らなくてもいい。芽里のこだわりの問題だ。

「さてはレイキと繋がれた?」

どくんと心臓が鳴った。しかし、表情に表すほど芽里も馬鹿ではない。

「そんなわけないじゃん」
「でも、メリーってもともとレイキとTWX相互でしょ」
「コンカフェの営業で相互になってくれただけだよー。レイキはそういうお客さんいっぱいいるし」
「最近のレイキ、メリーばっか見てる! 私はキラ推しだなんから、気にせず話しちゃっていいんだよ。『ミルkey』のオタクの前では言えないこともさ」

芽里はふふと笑って答える。

「推しは恋愛対象じゃないんだってば」
「そっかー。現場でのレイキの態度が結構あからさまだったからもしかしてって思っただけなんだけど、違ったかー」
「そうそう」
「でも、メリーがレイキのオキニなのは間違いないね」
「オキニなんて思ってもらえてたら嬉しくて死んじゃうよー」

本当は彼女ですけど。心の中で呟きながら、芽里はきゃあきゃあ笑う。

トモカと別れて帰路に着く。トモカはメン地下仲間として感謝も友情も感じているが、簡単には話せない。
しかし、トモカはなぜあんなことを言い出したのだろう。態度や言動、芽里は細心の注意を払っている。

(レイキ、浮かれちゃってるからな)

ずっと好きだった芽里と両思いになったせいか、レイキは溺愛モードだ。その空気がダダ漏れている可能性はある。

(アイドルの彼女として、ちゃんと手綱を握っておかなきゃ)
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