かつて女の子だった人たちへ
2日後、この日の現場はいつものライブハウスだが、『モンスターライク』と対バンだった。ファンも2倍以上入っている。トモカはキラのメンカラーピンクとレイキのメンカラー緑のキンブレを二本持ちしているくらいだ。

(『ミルkey』だけでこのくらい盛り上がったらいいのに)

そのためにはファンがもっと彼らを押し上げなければ。やや後方に位置取っていると、ひとりの女子が芽里に声をかけてきた。

「ちょっといい。ミヤナさんが呼んでる」

トモカに目配せするが、トモカも何も聞いていないようで首を捻っている。
開演まで間があるので、前列2列目付近にいるミヤナの元へ行った。ミヤナは最初に会った時のようなツンとした顔をしている。

「メリー、レイキと繋がった?」

なんの前置きもなかった。芽里は喉の奥で息がかすれる音を聞いた。

「繋がってません」

ほぼ反射で答えていた。真顔だった。
嫌な予感があったわけではない。しかし、先日のトモカの質問が身構えさせるきっかけになった。

「始まる前だし、ここ狭いから手短に言うけど」

ミヤナは芽里の否定を聞いているのか聞いていないのかと言った様子で続ける。

「演者と繋がるのはやめて。『ミルkey』はこれからもっと成長していくグループなの。繋がりとか本命とか邪魔にしかならない」

ミヤナの冷たい顔。ミヤナの取り巻きたちも冷えた視線で芽里を見つめている。
芽里の動揺はすでに通り過ぎていた。
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