かつて女の子だった人たちへ
芽里は冷めた目でスマホの画面を見下ろす。

【ミルkeyオタクスレ】
『芋やっぱ緑の繋がり 顔ちかすぎ』
『シンプルにキモ』
『芋ってだれですか?』
『新規は質問やめてね』
『答えるけど緑のメンコンからの厄介』
『まあ緑だからいいっちゃいいがそういうグループだって思われたくない』
『誰とは言わないけど赤は大丈夫?』
『言ってるし』
『緑だから芋しか相手いないんじゃない』
『緑ファン食いまくりって聞いたけど』
『不人気メンにそれはない』

芽里はふーっと息をついた。根拠もないのに、雰囲気だけでこの言いざま。

「まあ、実際付き合ってますんでー」

ここで騒いでいる連中は他のメンバーを推しているファンがほとんどだろう。彼女たちには、こうして推しと繋がり、恋人になれた喜びはわからないのだ。
優越感から芽里はうっすらと微笑み、つぶやく。

「嫉妬って気持ちいいね」

それにしたってむかつくのは、この掲示板の連中が芽里を落とすためにレイキまで悪く言っていることだ。

「レイキの頑張りがわからないとか、馬鹿なの? そんなだから、推しに愛してもらえないんだよ。バーカ」

こんなところで足の引っ張り合い。馬鹿みたいとしか芽里には思えない。
ここの連中は治安維持のつもりだろうが、自分たちが治安を悪化させ、グループに新しいファンが付きづらくしているのがわからないのだろうか。

「まあ、いいのか。こいつらは『ミルkey』が売れるより、自分が演者に認知されて愛される方が優先なんでしょ。自分たちだって繋がるチャンスがきたら、躊躇なく繋がるくせに」

芽里は冷たい笑顔でスマホをテーブルに置いた。

「私はレイキの彼女だから。レイキの夢のために、純粋に『ミルkey』を推せるの」
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