かつて女の子だった人たちへ
『浅見芽里』
『飯田橋の只野田商事勤務』
『鶯谷ファッションヘルス ラブグレープ勤務 キャスト名りるる』

それだけではない。ファッションヘルス内のキャスト表を映した写真がある。芽里はセクシーなランジェリーキャミソール姿で、目元を手で隠しているが、見る人が見れば芽里だとわかる写真だ。さらに芽里がレイキと半同棲中のアパートの外観写真まであがっている。

「なにこれ……キモ……」

そう言いながら声が震える。

(もうここまでの騒ぎになっているの?)

『ミルkey』はファンもそこまで多くないまだまだ出たての地下アイドルだ。これほど騒がれるゴシップではないはず。それなら界隈の誰かが、芽里の個人情報を調べ上げ、こういったゴシップアカウントに情報を流した違いない。芽里を陥れるために。

とにかく証拠を集めておこうと画面をスクショし続けるが、手が震えた。
怖かった。自分の個人情報がさらされている。何より、誰にもバレたくなかった風俗勤務まで……。

「浅見、ちょっといいか」

真っ青な顔で会社に到着すると、オフィスに入るなり挨拶よりも先に課長が声をかけてきた。
いつもイライラしていて、気難しい課長が困惑の表情を浮かべている。
そのまま総務部に連れていかれ、面談用のパーテーションで区切られたスペースにやってきた。
総務部長が同席し、プリントアウトした紙を見せてきた。メールのようだ。

「これが会社のリクルーター用の受信箱に届いたんだ」
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