かつて女の子だった人たちへ
中身を見て、いっそう血の気が引いた。先ほどさらされていた内容とほぼ同じものがそこにあったからだ。
ランジェリー姿で目元を手で隠した芽里の写真もある。

「これはコラージュなどではないようだけれど、本当かな」

総務部長が尋ね、普段きつい課長が焦ったように言う。

「浅見、違うよな。おまえは真面目だし、何か事情があったんだろう」
「これは」

芽里は冷や汗をだらだらかきながら、視線をさまよわせる。

「友人に……キャストが足りないから写真だけ使わせてほしいと撮影を頼まれたんです。勤務はしていません。……共通の友人で私をよく思わない子が、写真を拡散したようです」

この苦しい言い訳を、上司たちがどこまで信じたかはわからない。しかし、芽里には咄嗟に出た嘘を自分自身に言い聞かせるように伝えるしかない。

「うちが副業禁止なのは知っているね。勤務実態がないというきみの言葉を信じるが、軽率な行動だったことはわかっているかい?」
「はい。申し訳ありません」
「リクルーター用の受信箱に来ていたメールだ。一部の社員はアクセス権限がある。もう削除済みだし、総務部では口外しないよう言い含めるが……」

他の社員がメールを見ていたら、簡単に噂は広がるだろう。興味を持って調べれば、芽里がメン地下界隈で炎上しているのもわかってしまう。

「悪意のある中傷なんですから、うちの顧問弁護士に相談できますよね。部長」

課長が総務部長に尋ねる。課長はまだ芽里を信じようとしてくれているのかもしれないが、総務部長の方はうなずきはするものの、芽里を見る瞳は冷ややかだ。見透かされているのかもしれない。
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