かつて女の子だった人たちへ
「あの、ちょっと……考えたいので、今日はやはりお休みさせてください」
芽里は総務部長と課長に頭を下げ、足早に総務部を後にした。まっすぐ会社のエントランスに向かう。すれ違う社員たちと目が合わせられない。
頭がぐちゃぐちゃのまま、芽里は逃げるように帰宅した。
「メリー、どうしたの? 早いね」
アパートでは、レイキがベッドから出たばかりと言った様子で、部屋着のスウェットにジャージ姿で座っている。芽里が買っておいた菓子パンをかじりながら、動画サイトでゲーム実況動画を見ているようだ。
「レイキ、私もう現場行けない……!」
芽里は床に座り込み、眉根を寄せ絞り出すような声で言った。
「私のことをSNSで中傷しているヤツらがいるの。そいつらが、私の個人情報をネットにばらまいて、会社に副業をバラしてきた。うちの会社、副業禁止だから、……まずくて」
この状況でも風俗だとは言えなかった。レイキの恋人なのに、他の男に性的なサービスを提供しているとは言いづらい。
「さらしたヤツらは、レイキと私が繋がっていることがよくないって思ってる。『ミルkey』の治安を悪くしてるって。だから私が現場に行かなければ、連中も諦めると思うの」
会社は最悪の場合、辞めればいい。風俗で稼ぎながら、レイキとの暮らしを安定させればいい。アイドルのレイキを現場で応援できなくても、金銭面や暮らしを支えることはいくらでもできるのだから。恋人の特権だ。
「困るよ!」
すると、いきなりレイキが大声を出した。
芽里は総務部長と課長に頭を下げ、足早に総務部を後にした。まっすぐ会社のエントランスに向かう。すれ違う社員たちと目が合わせられない。
頭がぐちゃぐちゃのまま、芽里は逃げるように帰宅した。
「メリー、どうしたの? 早いね」
アパートでは、レイキがベッドから出たばかりと言った様子で、部屋着のスウェットにジャージ姿で座っている。芽里が買っておいた菓子パンをかじりながら、動画サイトでゲーム実況動画を見ているようだ。
「レイキ、私もう現場行けない……!」
芽里は床に座り込み、眉根を寄せ絞り出すような声で言った。
「私のことをSNSで中傷しているヤツらがいるの。そいつらが、私の個人情報をネットにばらまいて、会社に副業をバラしてきた。うちの会社、副業禁止だから、……まずくて」
この状況でも風俗だとは言えなかった。レイキの恋人なのに、他の男に性的なサービスを提供しているとは言いづらい。
「さらしたヤツらは、レイキと私が繋がっていることがよくないって思ってる。『ミルkey』の治安を悪くしてるって。だから私が現場に行かなければ、連中も諦めると思うの」
会社は最悪の場合、辞めればいい。風俗で稼ぎながら、レイキとの暮らしを安定させればいい。アイドルのレイキを現場で応援できなくても、金銭面や暮らしを支えることはいくらでもできるのだから。恋人の特権だ。
「困るよ!」
すると、いきなりレイキが大声を出した。