かつて女の子だった人たちへ
「そうだとしてもトモカちゃんには関係ないでしょ」
「関係あるよ。メリーの家にいられなくなったら、レイキが戻るのは私んちだから」
「は……?」

芽里は言葉を失った。手の中のカフェオレの温度すら感じないくらい感覚が麻痺している。

「言わなかったけど、レイキはちょっと前まで私のヒモだったんだよ。コンカフェ時代から『ミルkey』デビューしてちょっとくらいまで。私もキラと別れた後で、キラより尽くしてくれるからいいかなーって飼ってたんだけど」
「ちょっと待って……、『ミルkey』を推すのはキラに頼まれたからだって……」

そこで芽里は思った。『ミルkey』デビューライブで芽里は写真を撮られて掲示板で叩かれた。思えば、あれからすべてが始まっていた。ちょうどよく声をかけてきたトモカ……。

(最初から全部、トモカちゃんのコントロールのうちだったんだ)

「メリーの存在はコンカフェ時代から知ってたよ。馬鹿で生活能力なくて、女関係だらしないレイキをずーっと推してる貴重なオタク」

トモカはふうとため息をついて、うっすら微笑んでいる。それがまさに彼女面で芽里は虫唾が走るような心地だった。

「女関係って……」
「あのさあ、レイキが努力だけで『ミルkey』のメンバーに選ばれるわけないじゃん。あいつ、色恋営業でメンコンの売り上げ上位だったの。あいつが馬鹿だから、女と長続きしないだけ」

信じられなかった。芽里の知っているコンカフェ時代のレイキは、ひたすらに一生懸命で、おっちょこちょいや失敗もあったけれど頑張り屋だった。そんな彼だから、芽里は放っておけなかったのだ。
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