かつて女の子だった人たちへ
初恋はアニメのキャラクターだった。
格好良くて勇気があって、だけど素直じゃなくて。最終回まで主人公の隣にいた彼は完璧だった。

だけど、芽里だってそんな存在が現実にいるとは思っていない。二次元と三次元は違うとわかっている。
アニメオタクというほどではないし、年頃になれば現実に恋人がほしくなったのも本音。
しかし、いいなと思う男子も気持ちが長続きしないのは嫌な部分を見てしまうからだ。容姿も態度も、ふとしたことで嫌になる。

それでもこれはという男子と実際の恋愛も体験してみたが、疲れるばかりだった。甘えも我儘も、許せたのは最初だけ。気持ちが冷めたら、気を使うのも時間を割くのも嫌になった。

やっぱり現実の男はいいや。そう思っていた頃だ。2.5次元の舞台を見た。
好きな作品の舞台化で、最初こそコスプレ舞台を見てもなという気分で出かけた。しかし、ひと目見て雷に打たれたように考えが変わった。理想を体現してくれる男性を見たと思った。
舞台という夢の世界だとわかっていながら、夢を引きずってコンセプトカフェを訪れた。そして、非現実と現実の狭間世界にすっかりハマってしまった。

芽里は道を間違えたとは思っていない。
巡り巡って最愛の恋人を手に入れられた。そのために失ったものもあるけれど、この先は手に入れた大事なものをひたすらに守っていけばいい。

(レイキは不誠実な男だったかもしれない)

帰路につく芽里はそう唱える。

(だけど、これからは違う。私の彼氏でいてくれるなら、全部許せる)
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