かつて女の子だった人たちへ
第8話
「どういうこと?」
芽里はレイキの前に正座し、恋人の顔を覗き込む。レイキは焦りと混乱の極致といった顔をしていた。髪はぼさぼさ、子犬のような顔は小さめの奥二重の目ばかりがギラギラしている。
「事務所に言われた。結果を出せなければ、今月末で『ミルkey』をクビだって」
「それはチェキや物販の販売数のせい?」
「そ、そう。あとは……ダンス……歌も……。」
ダンスと歌は本人がどうにかしてもらうしかない。しかし、この半年弱でまったく進歩していないのは運営だってわかっているだろう。下手なだけでなく、振りを間違えたり、短い歌割りでも音を外したりしているのだから、本人のやる気の問題と思われても仕方ない。
「私以外の女の子には頼れないの?」
芽里の問いにレイキは一瞬動揺をよぎらせ、すぐにきょとんとした顔を作る。
「他の女の子なんて、メリー以外に頼れる子はいないよ」
「私が今、元カノのトモカちゃんと会ってきたって言っても?」
レイキは目を見開き絶句した。それから、しらばっくれても無駄だと悟ったのだろう。即座に土下座の姿勢を取る。
「ごめん! 言わないでごめん! トモカちゃんにはコンカフェ時代に強引に誘われて、そういう関係に……」
「いや、それどころじゃないでしょ。ヒモ状態だったって聞いてる。レイキが『ミルkey』のメンバーになったのも、純粋に売り上げ上位だったからなんでしょ。色恋営業でね」