かつて女の子だった人たちへ
(あー全部ダサい。最高にダサい)

楽しそうに笑いながら、令美は弓を馬鹿にする。今まで二十数年間そうしてきたように。

(あんたが敬士に相手してもらえるわけないじゃん。バーカ)

「あのね、私の職場の同期って定期的に同期会をしてるんだけど、今度レクリエーションがあって、その関係で松田くんと必要なものを買いにいくことになったの」

弓は思い切ったように令美に言う。

「やったじゃん。いついつ?」
「来週の水曜。仕事の後に新宿のバスタ近くの、バラエティショップ」
「あー、わかるわかる」
「ふたりっきりなんだ。どうしよう、緊張しちゃう」

令美は弓の顔を覗き込んだ。

「もっと仲良くなるチャンスだね。せっかくだから、食事に誘ってみたら」
「でも、私なんかじゃ。令美みたいな綺麗な子じゃないと、恋愛対象にならないよね」

よくわかってるじゃないと令美は噴き出しそうになりながら、慈愛に満ちた表情を張り付ける。

「優しい性格や純情さが弓のいいところだよ。自信を持ってほしいな」
「令美……」
「頑張れ、弓。応援してる」
「う、うん。ありがとう」

弓は令美の心中に気づくことなく、頬を赤らめて微笑んでいた。未来に期待をした表情を見て、令美はおかしくてたまらなかった。


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