かつて女の子だった人たちへ
ランチも一緒に。どうせそんなことだろうと思った、と令美は内心つぶやいた。
小玉には妻子がいる。令美に親しく話しかけてくる男性の多くは妻子持ちだ。もちろん独身男性もいるが、令美の興味を引く男はいない。どの相手にもいい顔はしておくものの、誰とでも寝るようなことはしていない。
安売りはしたくない。相手にするなら、もっとグレードの高い未来ある男性がいい。
とはいえ、好意を示してくる男は何かと便利なので、いい距離で接している。
(ランチ、またあそこの洋食屋かな。一度、美味しいって喜んだら、毎回同じところなんだもん。あそこ、味濃いから午後に喉が渇くんだよね)
「久原さん」
小玉が去って行ったあと、そんなことを考えていると、やってきたのはふたつ上の先輩である丸岡だ。やぼったい雰囲気の女性で、いつも似たようなパンツスーツを着ている。オフィスで着用できる服のバリエーションを知らないのだろうと令美は思っている。
「今の話、聞こえていたけど、今日の午後はチームの打ち合わせでしょ」
令美はにっこり笑った。それは小玉たちに見せる笑顔と同じだが、相手は受け取り方が違うようだ。
「小玉部長のご指示ですので、私に言われても~」
「部長に言われたときに、打合せの予定があるって言えばよかったでしょう。部長だって、何が何でもあなたを連れていかなければってわけじゃないんだから」
丸岡も、小玉が下心で令美を誘っているのはわかっているのだ。それを断らない令美が腹立たしいのだろう。
小玉には妻子がいる。令美に親しく話しかけてくる男性の多くは妻子持ちだ。もちろん独身男性もいるが、令美の興味を引く男はいない。どの相手にもいい顔はしておくものの、誰とでも寝るようなことはしていない。
安売りはしたくない。相手にするなら、もっとグレードの高い未来ある男性がいい。
とはいえ、好意を示してくる男は何かと便利なので、いい距離で接している。
(ランチ、またあそこの洋食屋かな。一度、美味しいって喜んだら、毎回同じところなんだもん。あそこ、味濃いから午後に喉が渇くんだよね)
「久原さん」
小玉が去って行ったあと、そんなことを考えていると、やってきたのはふたつ上の先輩である丸岡だ。やぼったい雰囲気の女性で、いつも似たようなパンツスーツを着ている。オフィスで着用できる服のバリエーションを知らないのだろうと令美は思っている。
「今の話、聞こえていたけど、今日の午後はチームの打ち合わせでしょ」
令美はにっこり笑った。それは小玉たちに見せる笑顔と同じだが、相手は受け取り方が違うようだ。
「小玉部長のご指示ですので、私に言われても~」
「部長に言われたときに、打合せの予定があるって言えばよかったでしょう。部長だって、何が何でもあなたを連れていかなければってわけじゃないんだから」
丸岡も、小玉が下心で令美を誘っているのはわかっているのだ。それを断らない令美が腹立たしいのだろう。