かつて女の子だった人たちへ
(相手は例の先輩? 女? 誰?)

監視に気づいて逆手に取ったつもりだろうが、メッセージ誤爆とは詰めが甘い。
雰囲気からして、女に会っていた可能性が高い。令美は苛立った。相手の女はどんな女だろうか。令美より美しいのだろうか。スタイルはいいのだろうか。

令美は自分自身を百点の美女だとは思っていない。精一杯磨いて気を遣って、九十点まで点数をあげているのだと思っている。だからこそ、敵わないような美女と抱き合っている敬士を想像すると、総毛だつような感覚に襲われた。それは恐怖と不安だった。そんな女にどうやって勝てばいいだろう。

いや、付き合っているのは令美なのだ。結婚前提で同棲も始めた。そこは令美が強く主張していい部分である。令美はなるべく感情をさしはさまず敬士にメッセージを送った。

【今日はなるべく早く帰ってきて】

敬士からの既読はつかないが、向こうも弱みがあるなら早く帰ってくるだろう。スマホをバッグにしまう。

「久原さん、今日の外出だけど」

話しかけてきたのは丸岡だ。客先引継ぎの関係で丸岡と外出の予定があったのだ。

「前のアポが押しそうなの。私が先方にお願いするから、悪いけど十五時にリスケしてもらえる?」
「なんでですか?」

思わずつっかかるように言ったのは、敬士への苛立ちがあったからだろう。陰険な笑顔を隠しもせずに令美は言った。
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