かつて女の子だった人たちへ
「その時間の外出だと、帰社は十七時近くですよね。私のデイリーの業務が終わらないです」
「それは、悪いけど」
「新担当は私なんですから、丸岡さんは別に来なくていいです。私がひとりで予定通り十三時半に行ってきますよ」
「はあ? そういうわけにはいかないでしょ。私だって挨拶をして、あなたに引継ぎを……」
「引継ぎは社内でもできますよ。それに客先は旧担当に挨拶なんかしてもしなくてもいいんじゃないですか?」

明らかに定時に帰りたいがゆえの提案だった。それは丸岡だけでなく周囲で見ていた社員たちにもそう見えただろう。令美は間違ったことは言っていないという自負があった。配慮に欠けるというならそうだろうが、そんなものはくそくらえだ。
今日は絶対に早く帰って、敬士を問い詰めなければならない。


仕事を自分の思う通りのスケジューリングでこなし、定時に帰途についた令美は、マンションで敬士の帰りを待った。二十時過ぎ、普段よりだいぶはやく敬士が帰ってきた。それでも遅いくらいだと令美は思った。誠意を見せるならもっと早く帰ってくるべきである。

「ごめん!」

帰宅早々、敬士が頭を下げた。

「誤解しないでくれ。あのメッセージは同僚たちに送ったものなんだ。昨日のランチ、同期や後輩と何人かで言ったんだ。参加したメンバーみんなに同じメッセージを送ってるんだよ。その時、間違えて令美にも送っちゃったんだ」
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