かつて女の子だった人たちへ
敬士はスマホの液晶を見せてくる。令美に送ったメッセージを同僚とおぼしき男性に送っている画面だ。しかし、こんなものは頼めばいくらでも送らせてもらえるだろう。

「そのメンバーに女の子はいたの?」
「いたけど、普通の後輩の女子だよ。令美が嫉妬するような相手じゃないって。だいたい令美みたいに完璧な女の子と付き合ってて、他の女なんて目に入らないよ」

スマホをしまい、機嫌を取るように抱きしめてくる敬士。令美は苛立ちを覚えつつも、その胸に甘えるように頭をもたせかけた。

「勘違いで嫉妬しちゃった」
「ごめんって」
「敬士のこと大好きなんだから、不安にさせないでね」
「レミ可愛い。俺もレミが大好き」

そんなやりとりから数時間後、レミは夜中に起きだし、枕元で充電をしている敬士のスマホを手にしていた。

(パスコード、やっぱり変わってる)

同居の際に教え合ったパスコードは案の定変えられている。やましいところがある証拠だ。

(敬士のパスで心当たりがあるものは……)

同居の際に水光熱費をまとめて払うことになり、先に引っ越してきた敬士がアプリの登録をしたのだ。その後の管理は令美になったので、IDとパスワードは手元にある。

(そういえば、音楽と動画のサブスクも、パスワードを知ってるわ。全部一緒じゃん)

パスワードの数字部分を七桁タップするとあっけなくスマホのロックは外れた。

(ホント詰め甘……)

画面の灯りを布団で隠して証拠集めを始める。メッセージアプリを開くと、さきほどの同僚とのやりとりが一番上に来ていた。他の人間に同じメッセージを送った形跡を調べようと、次にある“みぃ”なる人物のサクランボのアイコンをタップした。
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