かつて女の子だった人たちへ
(なに、この女……)

ふたりで並び、ベッドで自撮りをした写真がある。
“みぃ”という女は目が離れた不細工な女だった。胸はそれなりに大きいが、谷間や脇の下の肉づきがだらしない。髪の毛は艶のないミディアムレングスで、前髪のあたりはつんつんと短い毛が立っている。

(私を抱きながら、こんなブスも抱いてたの?)

凄まじい美人だったらどうしようと思っていたのだ。負けたくないが、元から持っているもので劣っていたら、令美にはこれほどの苦痛はないと思っていた。
しかし、敬士が浮気相手に選んだのは令美とは天と地ほども差がある不細工な女。

(こんなに綺麗にしてる私より、こっちがいいの?)

可愛い。美人。スタイルがいい。
ルックスの良さは女の第一条件のはずだ。そのために、令美は自分を磨いてきた。
敬士に関して言えば、身の回りの金銭を払ってやってもいる。こんな不当なことはない。

「許さない」

令美は暗闇の中呟いた。見開いた目は一点を見つめている。
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