かつて女の子だった人たちへ
「このまま飛ぶつもりなら、ちょっと俺たちも警察に相談しなきゃって話はしてるんですよ。彼女さん、何か知りませんか?」
「私は……、彼が帰ってこなくなってしまって……スマホもブロックされていて」
同じ被害者として、敬士の同僚たちにすがろうか。ふとそんな思考が頭がよぎった。しかし、自分の腫れあがった顔を思い出し、何も言葉にできない。醜い傷で同情を買うくらいなら死んだ方がましだ。
そして、令美の判断はある意味正しかった。敬士の同僚の男はふうとため息をついて、吐き捨てるように言った。
「あなたも被害者かもしれませんけど、俺たちの金でいい思いしてたなら、ちょっといい気分はしないですね」
「私は……! 彼の分の生活費も出していたくらいで……!」
「お話できることもないんで、もう帰ってもらえますか?」
令美はニット帽を深くかぶりなおし、踵を返した。よかった。これ以上みじめな思いだけはしないで済んだ。
部屋に戻るとどっと疲れていた。そのままベッドに沈む。敬士と寝たダブルベッドが不快だったが、疲れていて顔の傷が痛み、他に寝床を用意する気にもなれなかった。
夢を見た。
子どもの頃の夢だった。
『令美は可愛いね』
『令美ほど可愛い子はいないよ』
『将来が楽しみだわ』
繰り返し聞こえる母の声。令美をしきり褒める声。母の顔は見えない。視界は暗闇のままだ。
『可愛くなくちゃ、女はおしまいなのよ』
母の声が響いた。
「私は……、彼が帰ってこなくなってしまって……スマホもブロックされていて」
同じ被害者として、敬士の同僚たちにすがろうか。ふとそんな思考が頭がよぎった。しかし、自分の腫れあがった顔を思い出し、何も言葉にできない。醜い傷で同情を買うくらいなら死んだ方がましだ。
そして、令美の判断はある意味正しかった。敬士の同僚の男はふうとため息をついて、吐き捨てるように言った。
「あなたも被害者かもしれませんけど、俺たちの金でいい思いしてたなら、ちょっといい気分はしないですね」
「私は……! 彼の分の生活費も出していたくらいで……!」
「お話できることもないんで、もう帰ってもらえますか?」
令美はニット帽を深くかぶりなおし、踵を返した。よかった。これ以上みじめな思いだけはしないで済んだ。
部屋に戻るとどっと疲れていた。そのままベッドに沈む。敬士と寝たダブルベッドが不快だったが、疲れていて顔の傷が痛み、他に寝床を用意する気にもなれなかった。
夢を見た。
子どもの頃の夢だった。
『令美は可愛いね』
『令美ほど可愛い子はいないよ』
『将来が楽しみだわ』
繰り返し聞こえる母の声。令美をしきり褒める声。母の顔は見えない。視界は暗闇のままだ。
『可愛くなくちゃ、女はおしまいなのよ』
母の声が響いた。