かつて女の子だった人たちへ
正統派の美麗なお弁当を見つめ、それから令美は作り主であろう女子社員に視線を戻した。ぷっと噴き出す。
なにしろ、綺麗な弁当とは対照的に女子社員はみすぼらしいほど自分に気を遣っていなかったからだ。顔の比率に対して大きすぎるメガネはおしゃれなのではなくダサい。メイクしているようには見えないし、ぼさぼさな眉毛はいじったこともなさそうだ。唇はかさかさのぱさぱさで土気色。
おそらくきちんとすればそれなりに見られる顔のはずなのに、自分をほとんどかまっていない様子である。

「あんたさぁ、こんな綺麗なお弁当作ってSNSにあげてるヒマがあったら、メイクしたら?」
「へ? え?」
「ノーメイクで髪もぼさぼさでみすぼらしいって言ってんのよ。だっさ。お弁当に手間かけられるなら、自分にだって手間かけられるでしょ? その方が有益だと思わないの?」

令美に言葉をぽんぽんぶつけられ、彼女は混乱しているようだった。そのどんくさい反応がまた令美を苛立たせた。

「あ、あの私のお弁当を褒めてくださり、ありがとうございます!」
「話かみ合わなすぎ。あんたがダサいからどうにかしたらって言ってるの」

すると彼女は照れたように頭をかき、それから言った。

「あは……ダサいとは思いますが、まあ私が時間をかけたいのはお弁当でして。好きなんです、料理を作って綺麗に詰めるのが。小さな世界を構築してるみたいで」
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