かつて女の子だった人たちへ
レイキは元気で明るい弟キャラ。メルティがファンタジー系コンカフェということもあり、最初に出会ったときは海賊の下っ端の格好をしていた。

『海賊船の船長だったら格好がついたのになあ』

そんなふうにおどけたレイキは、おそらく他のキャストに目立つ衣装を譲ったのだろう。レイキはどちらかといえば三枚目で、コンカフェではナンバーワンになれそうもないタイプだった。
空回ることもあるけれど、一生懸命で努力家。放っておけなくて、気づけばそんなレイキの元に通っていた。
動画投稿サイトのお店のチャンネルもチェックし、レイキのシフトに合わせて週一回は通う。

『メリーさん、待ってたよ』

レイキはよくなついた犬のように尻尾を振らんばかりに芽里のもとへやってくる。
SNSを教えるとアカウント名で呼び、こっそり相互フォローもしてくれた。

『メリーさんって、本当のお姉ちゃんみたい。俺、女兄弟いないから、嬉しいな』

芽里を姉のように慕い、無邪気に振舞うレイキは、本当に可愛い存在だった。
恋愛経験がないわけではない。大学時代には同級生と付き合ったこともある。
だけど、恋愛は疲れることばかりだった。価値観が合わなければ、すり合わせる努力をしなければならないし、なんでも恋人優先というのは不自由だった。彼氏の機嫌を取るのが無駄な労力だと思ってしまったら、交際は続かなかった。
それに引き換え、推し活は楽しい。
会いたいときに会いに行って、楽しく会話して終わり。チェキの軽い接触にはときめきをもらえるし、SNSや動画で日々も追える。
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