かつて女の子だった人たちへ
春、レイキが所属するグループやデビュー日が次々と発表されていく。『ミルkey(ミルキー)』というグループ名には少々首をひねりもしたが、印象に残る名前を運営が考えたのだろう。大手のアイドルグループだって、よくよく考えれば面白い名前をしていることも多い。
コンカフェ卒業イベントも決まった。
当日、芽里は予定通り来店し、プレゼントを贈りシャンパンを入れた。『ミルkey』の五人のメンバーのうち、三人が同じ『メルティ』出身者になるので卒業イベントも同時だ。レイキにもファンがいるのを見せつけたかった。
プレゼントはスポーツブランドのスニーカーにした。芽里でも手が届くし、もらって困るものでもないはず。

メルティの年齢層は比較的広く、卒業イベントは十代から三十代くらいの女性や、メンバーの友人なのか男性も集まって盛況だった。芽里と同じようにレイキを可愛がっている女性も幾人かいるようで、レイキはお祝いをたくさんもらっていた。
よかった。レイキは顔立ちも際立っているわけではないし、いじられキャラとして扱われることも多い。レイキの良さをわかって、応援してくれる人が自分以外にいるのは芽里にとって嬉しいことだった。

「メリーさん、今日はありがとう」

シャンパンコールもしてもらい、少しだけ特別感を味わった後にレイキが声をかけてきた。

「本当におめでとう。レイキ、輝いてるよ」

今日の主役のひとりなのだから、いちいち挨拶に来なくていい。そんな気持ちで言うと、レイキがぼそっと「あとでDM見て」と呟いた。
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