かつて女の子だった人たちへ
松田に困った笑顔を見せてから、弓には可愛らしく抗議しておく。
弓は「令美が美人で格好いいって自慢したかったんだもん」と無邪気に笑う。弓は笑うと小さな目が見えないくらいになる。不細工だから笑わないほうがいいのにと思いながら、令美は冷静に分析していた。
(この男が弓の“気になる人”。まだ付き合ってはいないってことよね)
今日、弓に呼び出された理由は『気になる人が社内にいて、令美に会わせたい』『令美の目からチェックしてほしい』との話だった。推察するにまだ恋人同士にはなっていないけれど、恋愛関係に発展しそうないい仲の男ということだろう。
弓の同期なら、日唐エナジーの社員である。令美の務める代永寺商事の数倍は大きな会社だ。そして、本人の明朗な雰囲気からコミュニケーション能力も高いと見受けられる。そういった男は、出世までの最短経路をはじき出すのが上手い。
テーブルにロンググラスのカクテルが到着し、三人で乾杯した。令美は早速切り出した。
「松田さんは、弓と同期なんですよね。オフィスも一緒なんですか?」
「俺はマーケティングリサーチ部です。新人研修時に同じ班だったんだよな、仁藤さん」
「マーケティングリサーチ部は花形部署で、私たちの代では松田くんしか抜擢されなかったんだよ。松田くんは優秀なの」
「エースは仁藤さんみたいに外商部に行くんだよ。俺なんか全然」
謙遜して見せるけれど、やはり社内でも期待されている人材のようだ。将来性はある。
「ふたりのお仕事の話、もっと聞きたいな」
小首をかしげて向かいのふたりを見つめると、弓が言う。
弓は「令美が美人で格好いいって自慢したかったんだもん」と無邪気に笑う。弓は笑うと小さな目が見えないくらいになる。不細工だから笑わないほうがいいのにと思いながら、令美は冷静に分析していた。
(この男が弓の“気になる人”。まだ付き合ってはいないってことよね)
今日、弓に呼び出された理由は『気になる人が社内にいて、令美に会わせたい』『令美の目からチェックしてほしい』との話だった。推察するにまだ恋人同士にはなっていないけれど、恋愛関係に発展しそうないい仲の男ということだろう。
弓の同期なら、日唐エナジーの社員である。令美の務める代永寺商事の数倍は大きな会社だ。そして、本人の明朗な雰囲気からコミュニケーション能力も高いと見受けられる。そういった男は、出世までの最短経路をはじき出すのが上手い。
テーブルにロンググラスのカクテルが到着し、三人で乾杯した。令美は早速切り出した。
「松田さんは、弓と同期なんですよね。オフィスも一緒なんですか?」
「俺はマーケティングリサーチ部です。新人研修時に同じ班だったんだよな、仁藤さん」
「マーケティングリサーチ部は花形部署で、私たちの代では松田くんしか抜擢されなかったんだよ。松田くんは優秀なの」
「エースは仁藤さんみたいに外商部に行くんだよ。俺なんか全然」
謙遜して見せるけれど、やはり社内でも期待されている人材のようだ。将来性はある。
「ふたりのお仕事の話、もっと聞きたいな」
小首をかしげて向かいのふたりを見つめると、弓が言う。