かつて女の子だった人たちへ
「頑張り屋のレイキに夢を叶えてほしいっていうのは確かにママの感情かも」
「わかった、わかった。芽里の気持ちはよーくわかった。今回は付き合うよ」

ようやく唯が折れてくれた。推しやジャンルが被ったことはないが、ファン心理については唯も理解が深い。

「でも、メン地下って怖いイメージがあるんだけど。なんかお作法が色々あるんでしょ」
「うーん、『ミルkey』はデビューで、ファンはみんなメンコンキャスト時代のファンのはずだから、厄介な古参とかはいないんじゃないかなあ」

少なくとも『メルティ』は、芽里がひとりで通える雰囲気の店だった。たまにキャストに本気の様子の女子もいたが、店は明るく、どろどろした雰囲気はなかった。
メン地下の流儀はグループによっても違うらしく、デビューグループの空気は現場に行ってみないとわからない。

「なら、いいんだけど」

唯は頷いて、メニューのタブレットを手に取る。注文したパスタはまだ来ていないが、デザートを見ているようだ。付き合ってくれるのだし、今日の食事はおごるべきだなと芽里は思った。

< 82 / 165 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop