かつて女の子だった人たちへ
デビューライブのチケットはネットで取った。発売に合わせてアクセスしたおかげか、二枚ともかなり早い整理番号だ。
嬉しいのと同時に、もしかして盛り上がっていないのではないかとかすかに不安になる。デビューライブで閑古鳥が鳴いていたら、レイキが可哀想だ。

しかし当日、イベント会場である代々木のライブハウスに行くと、入場を待つ人が二十人以上いるではないか。

「よかった。ちゃんとファンがついてる」

思わず安堵の息をつく芽里は、今日のために買っておいたキャミソールワンピース姿だ。はりきって鎖骨もボディラインもはっきり出たベージュのワンピースにセットアップのカーディガン。地味な顔立ちは変えられないが、スタイルがよく見えるだろうか。

「整理番号順の入場なんでしょ。呼ばれるまで待ってればいい感じ?」
「たぶん……」

唯に尋ねられ、芽里は頷く。なにしろ、芽里も初めてだからだ。間もなくスタッフが入場の案内を始める。その頃には待機人数は五十人以上になっていた。
整理番号の早い芽里と唯はかなり早い段階で会場入りができた。薄暗いライブハウスのエントランスホールにはフラワースタンドがいくつも立っている。ライブ会場は想像より小さい。

「チェキ券の販売は特典会の直前だって公式の案内にあったから、今はライブのために前行こう」

座席はなく、スタンディングだ。せっかく早い番号がとれたのだから、最前列でレイキの晴れ舞台を見たい。不思議と先に入ったファンたちが前に行かずに中ほどにいるので、芽里と唯は正面の最前列に陣取れた。
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