かつて女の子だった人たちへ
「メリーさん!」

横ではスタッフが時間を計っている。

「格好良かったよ。本当におめでとう」
「ありがとう、メリーさん! 緊張しちゃったよぉ」

スタッフが早口で告げる。

「お時間が来ますのでポーズを決めてください」

急かされ慌てた芽里は、レイキと並んでピースサインでチェキ撮影を終えた。
撮影が終わると会話も余韻もなく「お疲れ様でした~」とスタッフに引きはがされた。
そのままチェキを手に流れに乗って移動し、特典会終了。

(うそ、もう終わり? 喋れたの十秒くらいだったよね……)

何も話せなかったし、チェキを撮るのがメインで目もろくに合わなかった。これではコンカフェ時代の方がよほど喋れた。
ハッとして物販のテーブルを見ると、スタッフがまだチェキ券を売っている。カードは使えないので、財布の中の現金がいくらあったかを咄嗟に考えた。

「あの、レイキを……3枚お願いします」

なんとしてももう一度レイキと話したい。芽里はチェキ券を追加で購入した。
レイキの元へ戻ると、結構列に並んでいる人がいる。レイキはちゃんと認知されているのだと嬉しい気持ちになりながら、最後尾札を受け取り列についた。芽里の後ろにもすぐに女性が並んだので、レイキの人気だけ極端にないわけではないようだ。

「メリーさん、また来てくれたの?」

芽里の顔を見て、レイキはぱあっと表情を明るくした。その顔は緊張から解放されたというような油断した顔だ。

「レイキともっと会いたくて」
< 87 / 165 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop